蜂蜜のつぼ (in 瑞穂)

5月31日夜、Tブリ2銀そばのひとつの家からつらそうに咳き込む人の声が聞こえてきた。
 

 
Finn:ああ・・・どこへ行ってしまったんだ・・・
 
ヨロヨロとドアの外に出ていこうとする。何かを探している?とりあえず話を聞いてみることにした。
 
Finn:実は私の犬が数日前に居なくなってしまったんです。ゴホ・・・ゴホ・・・すみません・・・外の風が辛いので・・・ゴホッ・・・
 

 
かなりきつそうな様子のFinn。家の中で話をすることになった。
 
Finn:狭いところですが  私の犬のことですが・・・ゴホッ・・・
   私はいつも病気がちで家にいてばかりなもので、あの犬だけが私の・・・ 
   ところが、数日前のことですが、ふ、といなくなってしまって・・・
   私のほうも熱がひどく臥せっておりましたので、犬がいなくなったことに気がついたのは夜中のことでした・・・
   ゴホッ・・・ゴホ、しかし今まで一度もそんなことはなかったのに・・・
   この身体ですからなかなか探しにもいけず、犬のことで頭がいっぱいなのです。
   唯一の友人・・・唯一の家族・・・
 
それはさぞやご心配なことで・・・できることならばお手伝いしたい所である。
 
Finn:何か手がかりになるようなものがあればいいのですが・・・ゴホッ・・・ゴホ。
Kaori:見当がつく場所などは?
Finn:はい、そうですね・・・このとおり貧しい家なので、うーん・・・
 

 
そう言うと、何かを探し始めるFinn。しばらく探してはっとした顔をしながら言った。
 
Finn:・・・おや?ゴホッ・・・ここにあったはずの  なくなっています・・・
Kaori:蜂蜜ツボ?
Finn:貧しいので薬などは買えない私ですが、薬代わりにこの体に良く効く良い蜂蜜をいつも飲んでいるのです。
   ただ、このところお金が・・・恥ずかしいのですが、足りなくて・・・薬代わりの蜂蜜も買えない有様です。
   ゴホッ・・・ゴホ、その所為か咳きもひどくなって、寝込むことも多くなったのかもしれません。
Illtiria:まさか取りに・・・?
 
 Finn:あの蜂蜜は特別なもので、遠くからわざわざ送ってもらっているものです。
 
Illtiria:どこからでしょうか?
 
Finn:はい、蜂蜜屋は  蜂蜜店のものです。
   ここからはかなりの距離があるはず。そんな・・・私の犬が・・・あぁ・・・なんてことだ。うぅ・・・
 
動揺するFinn。心当たりがあるのはべスパーの蜂蜜店、犬の名前は  だということだ。
 
 
 
  Finn:私に沢山の幸せを運んでくれるようにと名づけました。
    そしてその通りになりました・・・大切な大切な私の・・・
    犬のことが心配です。皆様方にお願いがあります・・・ゴホッ
    あつかましいようですが、私の犬を・・・探し出してくれませんか?
 
無論引き受けましょう!今のところべスパの蜂蜜屋が唯一の手がかり、一行はべスパへと急いだのであった。
 べスパの蜂蜜屋に到着した一行。どやどやと店の中に入っていくと、店員が現れた。
 

 
Rhett:おやおや、随分と沢山のお客さんだが・・・いらっしゃい!
    やぁやぁ・・・こんなに蜂蜜在庫があったかねぇ?
Kaori:あのー・・・
Rhett:ほいほい?どうしたんだ。
Kaori:ここに犬が来ませんでしたか?
 
ハッピーが来たかどうか聞いてみると・・・・・  もしや知ってる?!
 
Kaori:はい、犬のお客さん。
Rhett:犬といえば・・・ああ、そうそう!たしか・・・・昨日だったか?おとといだったか?
     たしか・・・なんだっけな、あの色、随分と薄汚れて
    まぁこりゃ汚い犬だったが賢そうでねぇ。
 
やはりハッピーはここに来た?!その犬の様子などを聞く。
 
Rhett:うーん、茶色だったかなぁ・・・元は。汚れてるは怪我してるわで
    そりゃもうひどい様子だったよ?
Kaori:蜂蜜買っていきました?
 
 Rhett:小さい口にでっかい重そうなつぼを必死でくわえてねぇ
     よろよろやってきたんだが肝心のお金を持っていない。
 
 
あららら・・・・・せっかくここまで来たのに、ハッピーがお金持ってるはずもないか・・・しかし店員はこう続けた。
 
Rhett:まあでも・・・私も犬好きでね。蜂蜜のつぼもこの店のものだったからサービス、と思って 
 
おおお!なんて親切な店員さん!しかし、その顔をすこし曇らせながら言った。
 
Rhett:しかしねぇ、ますます重くなったそのツボを引きずらないように必死でくわえてなぁ・・・ありゃ一体どこの犬だい?
 
みんなでブリテンから来たことを伝えると、腰を抜かさんばかりに驚く店員!
 
Rhett:!!!!!あんだってぇぇぇ!!!???  ブリテイン!!!???
    そったら・・・・遠いところから。まだ帰ってないのかい?!そりゃあ・・・大変だ。
    だってほら、あそこからここまでの間に 
    モンスターもうじゃうじゃ、あんなところを・・・越えてきたのかい・・・
Kaori:街道沿いで帰ったのでしょうか・・?
Rhett:あぁ、そうだなぁ。あの様子じゃそう遠くへは行ってないはずだなぁ。
    あんな犬だ。必死になって無理してるんだろう。
 
すぐに探し出して保護しないと大変だ。
 
Rhett:少し遠くへは行ってるかもしれん。街道沿いにブリテインに向かっていけば
    ひょっとしたら追いつくかもしれないが・・・
Kaori:OK、ありがとう。行ってみます。
Rhett:随分消耗している様子だったから頼むよ・・・
 
急げ街道へ!一行はハッピーの後を追うように街道へと馬を走らせた。
 街道沿いに走ることしばらく・・・気が付くとすぐそばに、ふうっと一匹の犬の姿が現れていた。
 
私たちの姿を見て吠えていたが、もしやハッピー?!
 
dog:ワンワン!
Kaori:ハッピー?
 
dog:ワンワン! 
 
Kaori:よしよし、がんばったね。
 
 
やはりハッピーのようだが何か伝えたそうにしている。  そしてどこかへ連れて行こうとする。
 
一緒に走っていこうとするが、ハッピーの息が上がっている。長い道のりで疲れている?
 
Kaori:ゆっくりでいいよ、歩こう。
 
と、ハッピーに言ってみるが  と、走るのをやめない。何を急いでいるのだろう・・・??
 

 
たどり着いた所はブリテンへ向かう街道の三叉路そば、ガードポストだった。
ハッピーは木の下をうろうろして吠え、必死に何かを訴えている。
しかし・・・・しばらくすると、ハッピーの姿はすうっと消えてしまったのだった。
しばらく何が起きたのかわからないPC一行。するとそこへガードポストの中から声が聞こえてきた。
 
 Sandor:むむ?こんな辺鄙なところに、ややっ・・・随分と沢山の冒険者だがどうなされましたか?
 
Kaori:あのー・・・ここ数日で犬が来ませんでしたか?
 
 Sandor:ぼろぼろのぼろ雑巾ような汚い犬がふらふらと。
 
ハッピーはやっぱりここに来ていたんだ!なるほどというような顔をしながらSandorは続けた。
 
Sandor:ふむ・・・そうか。なんと不思議な・・・まあとにかく私の話を聞いてはくれないか?
    昨日の夜中だったかな。見回りの途中で  聞こえてきてな。
    目を凝らすと南の方から真っ黒い犬が足を引きずるようにやってきてな。
    あの犬が通った後に、まあ・・・血だまりが出来るほどひどい怪我をしていてね。
    夜に歩いていたんだ。そこら辺の狼にでもやられたんだろうね・・・可哀想にな。
    放って置けなくて何とかしようと抱き上げようとしたら、唸って暴れて
    どうしても北の方に行きたがってね。仕方ないから水でも・・・と思ったが
    口にはツボをくわえて  襲われっぱなしだったのもその所為だろうな。
    無理にでもそれを離そうとすると、これまた暴れてね。仕方がないから犬の後を追っていったのだが
    いくらも進まないうちに・・・ばったり倒れてね。いや・・・あれはなんというか壮絶な・・・最期だったよ。
 
なんと・・・・・それじゃあハッピーは・・・・
 
Sandor:ああ、残念ながら 
 
最期まで蜂蜜のツボをくわえて離さなかったハッピー・・・沈黙の中、Sandorがみんなを外に呼んだ。
 
 
 Kaori:その後どうしたんですか?
 Sandor:どこの犬かもわからなかったのでね。
     気にはなったが、とりあえずは
     ここに埋葬してやったよ・・・・
 
 そう言ってSandorが指差したのは
 さっきハッピーがしきりに何かを訴えていた
 木の根元であった。
 実は病弱な主人のために、ブリテンからべスパに行き
 蜂蜜を持って帰る所だったことを伝えると
 Sandorは驚いた。
 
 Sandor:なんと!ブリテンから・・・そうか・・・
     それであの犬あんなに必死に・・・
 
すると思い出したようにSandorは言った。
 
Sandor:おお、そうそう、その蜂蜜のツボ 
 
Kaori:せめてそれだけでも飼い主に・・・
Sandor:うむ、そうだな。一番だろう。
 
そして最初は他の人が蜂蜜ツボを預かることになったが、飼い主の家の場所がわからないということで、代わりに私が預かることに。
 
Sandor:Kaoriさんに頼むとするかな。どうか、頼んだぞ。  Kaori:お預かりします。
 
Sandorから蜂蜜ツボを預かり、急いで飼い主のFinnの所へ戻ることになった。
Kaori:さて、どうしたものか・・・どう伝えるよ?
 
正直かなり困っていた私。ハッピーの死をどう伝えるか・・・素直に言ったほうがいいのか否か・・・悩んでいる間に、Finnの姿が現れた。
 

 
Finn:ゴホッ・・・おお!戻りましたか。それで・・・
Kaori:ベスパーまで行ってきました。
 
 Finn:それは・・・すまなかった。
 
Kaori:ハッピーは、やはり蜂蜜屋まで行ってました。
Finn:そうか・・・やはり。
Kaori:はい。これを預かってきました。
Finn:それで・・・それで・・いまは?
 
そう言って蜂蜜ツボをFinnに渡した。しかし・・・・やはり正直に言ったほうがいいのだろうか・・言葉に詰まる。
 
Finn:おおっ・・・これは確かに私の・・・だが・・・
Kaori:ブリテン三叉路のガードポストでお預かりしました。
Finn:ええ・・・・・?いったい?
Kaori:ハッピーは・・・貴方のために一生懸命がんばりましたが・・・
Finn:っ・・・・そんな、いや、まさか・・・
Kaori:・・・残念ながら長い道のりだったようです・・・
 
 Finn:ハッピーは・・・それじゃあ・・・?
 
Kaori:・・・はい・・
Finn:どこですか?どこ・・・ですか・・・?
Kaori:ブリテンの三叉路で、貴方が元気になるのを待っています。
Finn:そっ・・・・・んな、うう・・・嘘でしょう、嘘でしょう・・・
 
事実を知り泣き崩れるFinn。  なんと声を掛けていいか戸惑う・・・・
 
Finn:嘘でしょう・・・ハッピー・・・
Kaori:いますよ。貴方に蜂蜜を届けるように、ハッピーが導いてくれました。
 
Finn:そうだったんですか・・・・そうだったのか・・・ハッピー 
   私が悪かったんだろうか・・・?
Kaori:貴方のことを思ってのことです。
Finn:そうか・・・
 
みんなから励まされるFinn。ハッピーだってFinnの事を思ってがんばったんだ。
 
Finn:ハッピーが  私も・・・そして皆さんもハッピーのように・・・
   どうか!どうかこれだけ私から言わせてください。皆さんにも大切なペットいると思います。
   私とハッピーのような間柄の大切なペット。ハッピーが特別とは限らないのです。
   皆さんの大切なペットもそうですよね。皆さんのことをきっと大切に・・・
 
懸命に語るFinn。聞いていて悲しくなる・・・・最後にPC達にお礼を述べた。
 
Finn:あぁ・・・本当に皆さん・・・ありがとうございました。ハッピーもきっと、これで安らかに・・・
 
励ましの言葉を送るPC達。なんどもありがとうを繰り返すFinn。
 
Finn:この蜂蜜、いつにもまして良い薬になりそうです。皆さん・・・ありがとう!
 
 そう言って蜂蜜を舐めるFinn。早く元気になって欲しいものだ。
 
Finn:ありがとう・・・元気が出てきました。目標が出来たので頑張れそうです!
   だけど少しだけ・・・少しだけ・・・私に悲しむ時間を下さいね・・・
 
もう私達からの言葉は必要ないだろう・・・そう思い黙って静かにFinnの家の外に出た。
 
するとその場に一瞬だけ  ハッピーの姿がゆらゆらと現れた。
 

 
Kaori:ちゃんと渡したよ。
dog:クゥン・・・
Kaori:大丈夫。
dog:ワンワン!
Kaori:お前もゆっくり休みな ^−^
dog:*とても喜んでいるようだ* わん!
 
安心したのだろうか、ハッピーの体はだんだんと薄れていく。静かに目を閉じ・・・・・そのまま空気に混じるように消えてしまった。
ご主人様のことを思って一生懸命だったハッピー・・・どうか安らかに・・・

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